2026年10月23日
01 心臓・循環器
はじめに
「突然、胸が痛くなった」「胸が締め付けられる感じがする」「胸がチクチク痛む」
このような症状を経験したことはありませんか?胸の痛み(胸痛)には、筋肉や神経によるものから、狭心症や心筋梗塞といった命に関わる病気まで、さまざまな原因があります。今回は、胸痛の主な原因や危険な症状、必要な検査について解説します。
1.胸痛の原因にはどのような病気がある?
胸痛の原因は、大きく分けて以下のようなものがあります。
① 心臓や血管の病気
・狭心症
・心筋梗塞
・大動脈解離
・心膜炎
② 肺の病気
・気胸
・肺塞栓症
・肺炎・胸膜炎
③ 胃や食道の病気
・逆流性食道炎
・食道けいれん
④ 筋肉や神経の病気
・肋間神経痛
・肋軟骨炎
・胸の筋肉の炎症や痛み
このように、胸痛があるからといって、必ずしも心臓の病気とは限りません。しかし、特に注意が必要なのは、狭心症や心筋梗塞などの心臓の病気です。
2.狭心症と心筋梗塞の違いは?
狭心症とは?
狭心症は、心臓に血液を送る冠動脈の血流が不足することで、胸の痛みや圧迫感が生じる病気です。典型的には、次のような特徴があります。
・歩いたり階段を上ったりすると胸が苦しくなる
・胸が締め付けられる、押さえつけられる感じがする
・数分程度続き、安静にすると改善する
・胸だけでなく、肩・腕・首・あごなどに違和感が出ることもある
ただし、安静時に起こる狭心症もあります。新しく出現した胸痛、以前より強い・長い・頻回になった胸痛は、不安定狭心症などの可能性もあるため、早急な評価が必要です。
心筋梗塞とは?
心筋梗塞は、冠動脈が血栓などで詰まるなどして心臓の筋肉への血流が著しく不足し、心筋の一部が壊死する病気です。次のような症状がみられることがあります。
・強い胸の痛みや圧迫感が続く
・安静にしていても改善しない
・冷や汗や吐き気を伴う
・息苦しさを感じる
・左腕や背中、あごなどにも痛みが広がる
心筋梗塞は、できるだけ早く治療を開始することが重要です。また、高齢者や糖尿病のある方では、典型的な胸痛が目立たず、息切れや強い倦怠感などが主な症状となる場合もあります。
3.すぐに救急車を呼んだ方がよい胸痛とは?
以下のような症状がある場合は、緊急性の高い病気が隠れている可能性があります。
・突然、強い胸の痛みが出現した
・胸の圧迫感や締め付け感が数分以上続いている
・胸痛とともに冷や汗、息苦しさ、吐き気がある
・胸から背中にかけて突然激しい痛みが生じた
・意識が遠のく、失神する
このような場合は、様子を見ずに119番で救急車を呼んでください。自分で車を運転して受診することは避けてください。強い痛みや冷や汗、息苦しさがあるときは、一定の時間が過ぎるのを待つ必要はありません。痛みが一度改善しても、心筋梗塞や不安定狭心症などの可能性が否定できない場合があります。
4.チクチクする胸の痛みも心臓の病気?
胸がチクチクする、針で刺されるように痛む、体を動かすと痛むといった症状は、筋肉や神経、胸壁などが原因となることがあります。例えば、次のような場合です。
・胸の特定の場所を押すと痛い
・体をひねると痛みが強くなる
・深呼吸や咳で痛みが強くなる
このような症状では、心臓以外の病気も考えられます。ただし、深呼吸や咳で痛みが強くなる場合には、胸膜炎、気胸、肺塞栓症など、肺や胸膜の病気が関係することもあります。ただし、痛みの性質だけで心臓の病気を完全に否定することはできません。特に、これまで経験したことのない胸痛や、症状を繰り返す場合は、医療機関での評価が大切です。
5.胸痛がある場合、どのような検査をする?
胸痛の診察では、痛みの特徴や持続時間、運動との関係、持病などを確認し、必要に応じて検査を行います。
心電図検査
心臓の電気的な活動を記録し、心筋梗塞を疑う変化や不整脈がないかを調べます。ただし、心電図が正常でも、狭心症や心筋梗塞を完全に否定することはできません。
心臓超音波(心エコー)検査
心臓の動きや弁の状態を確認します。心臓の筋肉の動きに異常がないか、心臓の機能が低下していないかなどを評価できます。
血液検査
心筋梗塞が疑われる場合には、心筋の障害を反映するトロポニンなどを測定します。発症直後には異常が現れないこともあり、時間をあけて再検査する場合があります。心筋梗塞の診断には、症状や心電図とあわせて評価することが重要です。
その他の検査
必要に応じて胸部レントゲン検査や、専門医療機関で冠動脈CT検査、心臓カテーテル検査などを行う場合があります。
6.胸痛があるときは何科を受診すればよい?
緊急の症状がなく状態が落ち着いている場合は、内科や循環器内科で相談することができます。初めての胸痛や運動時の胸痛がある場合は、痛みが治まっていても早めに受診してください。特に、次のような方は心臓の病気に注意が必要です。
・高血圧がある
・糖尿病がある
・脂質異常症がある
・喫煙習慣がある
・家族に若くして心筋梗塞を発症した方がいる
これらは冠動脈疾患の危険因子として知られています。ただし、危険因子がない方でも心臓の病気を発症することがあります。また、現在進行している強い胸痛や、冷や汗・息苦しさなどを伴う胸痛では、通常の外来受診を待たずに救急車を呼んでください。
7.胸痛の治療について
治療は胸痛の原因によって異なります。狭心症では、禁煙や血圧・脂質などの管理に加え、症状を抑える薬や、病状に応じて心筋梗塞を予防する薬を使用します。必要な場合には、カテーテル治療やバイパス手術を検討します。
心筋梗塞などの急性冠症候群では、救急医療機関で速やかな評価と治療が必要です。大動脈解離、肺塞栓症、気胸などにも、それぞれに応じた緊急の治療が必要になることがあります。自己判断で痛み止めなどを使い続けず、原因を確認することが大切です。
8.まとめ
胸痛の原因はさまざまで、必ずしも心臓の病気とは限りません。しかし、狭心症や心筋梗塞、大動脈解離、肺塞栓症など、緊急の治療が必要な病気が隠れていることもあります。特に、胸が締め付けられるような痛み、運動時に起こる胸痛、これまでに経験したことのない胸痛には注意が必要です。胸痛を繰り返す場合や、原因がわからず不安な場合は、循環器内科への相談をおすすめします。
胸痛の評価では、問診・診察を行い、診察内容に応じて検査を検討します。必要な検査や治療については、医療機関でご相談ください。気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください。
参考文献
参考文献
1. 日本循環器学会.急性冠症候群ガイドライン(2018年改訂版). (j-circ.or.jp)
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6. 厚生労働省.こんな時は迷わず119へ. (kakarikata.mhlw.go.jp)